日米の金融政策の考え方は逆方向
昨年は、米国の金融政策の行方やそれに関わる要人発言に日米の株式市場は大きな影響を受けました。米国では、2022年6月以降、インフレを抑制するために合計11回の利上げを実施してきました。利上げは、金利の上昇につながるため、株式市場にとってはネガティブ要因となります。2024年は、一転して米国の利下げが期待されていますが、実施された場合には、米国の株式市場にとっては明るいニュースとなりそうです。
一方、日本は大規模な金融緩和を実施しており、「マイナス金利政策」を継続してきました。2024年は、米国が利下げに転じ、日本がマイナス金利を解除するのではないかと考えられています。仮にマイナス金利が解除もしくは、金融緩和政策が引き締め方向に修正された場合には、日本株にとってはネガティブなニュースになりそうです。実際、昨年12月の植田和男日銀総裁のタカ派的(金融引き締め方向への)発言を受けて、日本株市場が一時大きく下落する場面も見られました。
金融政策決定会合後は相場が大きく動くことも
米国の金融政策は、FRB(連邦準備理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)で決定されますが、日本の場合は、日銀の「金融政策決定会合」で決まります。金融政策決定会合は、年間8回、各会合とも2日間に渡って開催されます。なお、2024年は、以下のスケジュールで実施予定です。
最初に株式市場が大きく動くのは、2日目の会合が終了し、金融政策が発表された直後です。特に、事前の予想範囲を超えるような決定がなされた場合には、株式市場の変動幅も大きくなりやすいです。会合が終了し、当日の株式市場がクローズしたのちには、日銀総裁の会見が行われます。すでに株式市場はクローズしていますが、この内容次第で翌日の株式市場の方向性も決まることになります。
さらに、会合の1週間後には、各委員の発言が「主な意見書」として公表され、約2カ月後には「議事要旨」が発表されます。ここでも、それぞれの内容を投資家が深読みして、株式市場が大きく動くこともめずらしくありません。
マイナス金利解除はいつ?解除後の相場はどうなる?
さて、2024年の金融政策決定会合ですが、マーケットの注目は「いつ、日銀がマイナス金利の解除に踏み切るのか」ということです。昨年末時点では、「1月の会合で政策の変更があるのでは」との観測もありましたが、能登半島地震による経済への影響を考え、1月の政策変更の観測は今のところ後退しています。マーケット関係者や経済系のメディアでは、春闘などで賃上げの状況を確認したのち、4月以降の会合で決定されるとの見方が有力視されています。
最後に、米国が利下げに転換し、日本がマイナス金利の解除に踏み切った場合の株式市場への影響を考えてみましょう。仮にそうなった場合には、日米の金利差が縮小することで、外国為替市場では円高(ドル安)に推移することが考えられます。急激に円高に振れるような局面では、為替による差損を警戒し、日本の輸出企業は売られやすくなりそうです。
一方で、海外で商品を調達し、国内で販売する企業などには追い風が吹きそうです。また、金利上昇によって収益が期待できる銀行や生損保なども買われる可能性があります。
ただ、日銀がマイナス金利の解除に踏み切るということは、「マイナス金利」という金融の異常事態から日本の金融が正常化に向かうということでもあります。長い目で見れば、長期投資家にとっては絶好の仕込み場となるかもしれません。2024年は、日銀の金融政策に注目し、株式投資のタイミングを見計らってはいかがでしょうか?
記事作成日:2024年1月10日