この記事でわかること
・金利が下がると、株価には好材料
・金利が上がると、株価は安く、通貨は高くなる
・良いインフレなら利上げでも株高の可能性
「金利上昇を受けて、米国株が下落」
「金利高でドルが買われる」
といったニュースを見聞きしたことはないでしょうか。
金利、株、為替はお互いに影響しあって動いています。この中で中央銀行が積極的に携わっているのが金利です。中央銀行は政策金利の上げ・下げを使って物価や景気をコントロールしようと試みます。
今回は、金利の上げ・下げが株価、為替にどのような影響を与えるか見ていきます。
金利が低下すると
金利とは、お金を貸し借りする時にかかる「費用(コスト)」です。金利の低下は、お金の借り手の費用が少なくなることを意味します。
金利が低下すると、個人は住宅ローンなどを低コストで組みやすくなります。企業は低いコストで銀行からお金を借りて機械などの設備投資をすることができ、事業の拡大に繋がりやすくなります。これにより景気が良くなり、株価が上昇する可能性が高まります。
金利の低下は、株価にとって好材料と考えていいでしょう。
この時、為替相場では、お金は金利の低いところから高いところに流れる傾向があるので、金利の低い国の通貨は売られやすくなります。
金利が上昇すると
逆に金利が上昇すると、資金の借り入れコストが上昇するので、個人も企業もお金を借りることをためらいやすくなります。
個人は、高いコストを払い続けることができるのか不安になります。企業にとってはコストが上昇したことになり、事業拡大のハードルが高まるためです。このため、経済活動が抑えられ、株価を押し下げる要因になると考えられます。
為替市場では、金利低下時とは逆に、金利が上昇するとその通貨は買われやすくなります。
昨年3月、米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始、その後、ドル円は、大幅なドル高・円安になりましたが、これがいい例です。
良いインフレ
ただ、必ずしも金利の上昇が株価の下落に繋がるとは限りません。
それは、「良いインフレ」と言われている時です。「良いインフレ」とは、景気が回復し、賃金の上昇が起こり、そして消費が拡大していく状況です。良いインフレの時は、利上げをしても、消費が衰えないので、株価は上昇を続けることがあります。
この時、為替市場では、景気の良さと金利の上昇を好感し、その通貨は買われやすくなります。
悪いインフレ
一方、「悪いインフレ」もあります。悪いインフレとは、景気が悪く賃金が上がらない状態で、物価が上昇することです。
昨年、日本がこれに近い状況にありました。円安やロシアのウクライナ侵攻により物流が混乱し、多くの輸入品の価格が上昇しました。しかし、景気が悪いので、企業は物価上昇分を簡単には価格転嫁することができませんでした。このため、業績が悪化し、賃金や消費も伸びず、景気は減速します。
「悪いインフレ」でも中央銀行は、インフレを抑えるために、利上げを実施せざるを得ないことがあります。景気が悪い中で利上げを実施するので、さらに景気は悪くなります。このため、その国の通貨は売られやすくなります。
強い先入観を持たない
金利、株価、為替は、切っても切り離せない関係です。ただ、常に同じ動きをするわけではありません。これまで述べたように、金利が上昇して株価が下落する時もあれば、金利と株価が同時に上昇する時もあります。その時の状況次第です。
また、金融マーケットでは、「織り込み済み」という言葉があります。これは、これから起きることを、マーケットが先に反映することです。たとえば、日銀が次回の会合で利上げするとの見通しが強まれば、これを嫌気して株は実際に利上げする前に売られやすくなります。
しかし、実際に利上げをした時は、株価はすでに利上げを反映した値段となっており、悪い材料が通過したとして、逆に買われることもあります。
特に短期の取引をする場合は、金利、株、為替の関係性に強い先入観をもって考えない方がいいでしょう。
記事作成日:2023年2月20日