円高で買われるのは自動車株?インバウンド?食品株?銀行株?
これまでは円安ドル高トレンド
昨年の外国為替市場では、円安(ドル高)が進む展開となりました。とりわけ、2023年1月の1ドル=127円台から同年11月につけた151円台までは、ほぼ一本調子の円安となりました。
為替の変動には、さまざまな要因がありますが、2022年からの円安(ドル高)の進行は、米国と日本の金利差の拡大が大きく影響しています。一般的に、お金の流れは、低金利通貨の国から高金利通貨の国へと流れるため、金利の高い通貨は上昇しやすくなります。
米国のFRB(連邦準備理事会)では、インフレを抑制するために2022年から計11回の金利引き上げを実施しました。その結果、政策金利は0.25%から5.50%にまで上昇しています。
一方、日本はというと、現在でもマイナス金利政策を継続しており、これによって日米の金利差が拡大する形となっています。
2024年は円高にシフトか?
さて、2024年ですが、円安の流れはそろそろ反転し、円高に向かう可能性が指摘されています。FRBにおいては、2024年の前半から政策金利を引き下げ方向(ハト派)にシフトしていくと想定されています。
一方、日銀(日本銀行)では、これまでのマイナス金利などの金融緩和政策を引き締め方向(タカ派)に修正していく公算が大きい状況です。
これにより、欧米と日本との金利差は縮小していくとみられますので、教科書的に言えば、為替相場はドルに対して円高に向かうと考えられます。
実際、FRBの利下げ転換への期待が高まってきていること、日銀の金融緩和政策の修正思惑が急速に強まってきていることから、2023年の11月から同年末にかけては、ドル/円相場は一時約10円幅の円高が進みました。今後、米国での利下げや日本での金融緩和政策の修正が正式に決定された場合、一段の円高(ドル安)が進むものとみられます。
円高デメリットは自動車など輸出企業と一部国内企業にも
さて、ドル/円相場の変動は、株式市場にとってどのような影響があるのでしょうか?
まず日本株においては、為替の影響が大きいものとして、自動車メーカーや自動車部品などの輸出企業が挙げられます。
輸出企業は一般的に、海外での売り上げはドル建てが多く、それを円に換算する際に円高の場合は目減りすることになります。
例えば、1ドル=100円の際に1,000ドルの売り上げがあれば円での収入は10万円となりますが、1ドル=80円の際に1,000ドルの売り上げがあっても円での収入は8万円にしかなりません。この差は利益の減少要因となってしまいます。自動車関連株は特に輸出比率が高いので、総じて円高は利益の減少、株価の下落要因となってしまいます。
上場している日本の製造業は、自動車のみならず多くの企業がグローバル展開を行っており、総じて円高はマイナス要因となります。円建てで取引を行っている企業に関しても、円高は海外競合企業との価格競争で不利になります。
また、連結決算に占める海外子会社の影響が大きい企業も、円高は決算内容を悪化させることになります。子会社の利益が1,000万ドルの場合、1ドル=100円なら10億円が利益となりますが、1ドル=80円なら8億円しか利益に加算されなくなるからです。
そのほか、円高によるデメリットが予想されるのは、輸出をしていなくても、国内販売において海外企業と競争している業種などでは、海外企業の価格競争力が高まることで、売り上げの減少が余儀なくされそうです。鉄鋼や繊維製品などが想定されます。
また、円高は海外からの購買力意欲の減退につながるため、不動産株やインバウンド関連にもマイナス材料となります。
円高メリットは輸入企業と海外投資家にも
逆に、輸入が多い企業は円高が利益にとってメリットとなります。
輸入が多い企業とは、海外から商品を輸入して国内で販売する企業、原材料を輸入して製品を製造し、それを国内販売する企業などです。前者ではニトリホールディングス(9843)などの小売り関連や電子部品商社などが挙げられ、後者では食品株などが代表格と言えるでしょう。
日本企業は製造業が多く、今後予想される円高は企業収益や株価にとって基本的にはネガティブに働くこととなります。
ただ、円高の要因となる米国金利の低下は米国株高につながるため、その点では日本株の下支え要因にもなりそうです。
また、日本の金利上昇も銀行株にとってはストレートな買い材料となります。
さらに、円相場が上昇に向かう場合、海外投資家が保有している日本株のドルベースでの価値は上昇するため、海外投資家にとって現在のタイミングは、日本株投資を積極化させる局面であるとも判断できます。
2024年は、為替市場の動向にも注視しながら、株式投資を行ってみてはいかがでしょうか。
記事作成日:2024年1月9日