いまの時代、銀行預金だけではなんとなく不安だから、投資をしてみたい。けれど、投資に対して「なんとなく怖いもの」「損してしまうかも」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。
元本が保証されており、万一銀行が破綻しても預金保険機構に1,000万円まで守られている銀行預金と違って、投資をするとリスクを避けることはできません。
ただ、そのリスクをコントロールすることは可能です。そのときに基本となるのが分散投資です。
ここでは、投資をする際に大切な分散投資について説明します。
分散投資とは
「分散投資」とは、投資先を一つに限定せず、複数の投資先に投資することです。
投資に関する有名な格言に、「卵を1つのかごに盛るな」があります。
いくつかある卵を1つのかごに入れてしまうと、万一そのかごを落とすと全部の卵が割れてしまいます。しかし、別々のかごに入れていれば、1つのかごを落としても他の卵を守ることができます。
同じように、投資する対象を複数に分けていれば、仮にそのうちの1つが値下がりしても、違う値動きをする他のものでカバーできます。そして、全体としてはリスクの低減が期待できるのです。
分散投資には3つのポイントがあります。「投資商品の分散」「地域の分散」「時間の分散」です。
投資商品の分散
投資商品とひとくちに言っても、株式、債券、不動産などさまざまなものがあります。
これらの商品にはそれぞれ特性があって、値動きも異なります。
たとえば、一般的に金利が上がると、株式は上がり、債券は下がるという動きを見せます。
もし、債券しか持っていない場合、金利が上がる局面になると債券価格は下がってしまいます。しかし、株式を持っていれば、債券のマイナスを株式でカバーすることができます。
「投資商品の分散」とは、このように異なる動きをする投資商品を組み合わせて投資を行うことを言います。
また、ひとつの投資商品の中で投資する銘柄を分けることも分散になります。
たとえば、株式投資の中で、成長が期待できるIT系などのグロース株と、安定した配当が期待できる銀行などのバリュー株を組み合わせるといったやり方です。
このように自分で複数の株式を買うことも銘柄の分散ですが、銘柄の選定に手間がかかり、費用も大きくなるのが難点です。ETFや投資信託でより手軽に銘柄の分散をすることができます。
地域の分散
「投資」というと、まず日本の企業の株を買うというようなイメージがありますが、投資の対象は日本に限りません。現在はインターネットによって世界のさまざまな国に手軽に投資をすることができます。GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)のような世界をリードする企業が多くあるアメリカに投資することもできますし、これから高い成長率が期待できると思えば新興国に投資することも可能です。
「地域の分散」とは、異なる状況にある地域の銘柄や資産、通貨を組み合わせて投資を行うことをいいます。日本国内と国外、あるいは先進国と新興国といった組み合わせが考えられます。
ETFや投資信託で、世界全体に投資をすることも可能です。
為替は日々変動しており、たとえば円安になった場合、資産が日本円だけだと資産価値が目減りしてしまいます。しかし、外貨建ての資産を持っていれば、目減りしたものをカバーすることができます。
時間の分散
元本が保証されている銀行預金と異なり、投資商品の価値は日々変動しています。
投資で利益をあげるためには「安い時に買って高い時に売る」ことをしなければなりませんが、それをすべて予測することは不可能です。
勇気を出して株を買ってみたけれど、そのまま下がり続ける、などということも。そうなると投資をする意欲もなくなってしまいます。
そういったリスクに対応する方法のひとつが「時間の分散」です。
「時間の分散」とは、タイミングを分けて投資することを言います。
一度にすべての資金を投入するのではなく、時間を分散させることによって、高値づかみのリスクを軽減することができるのです。
「時間の分散」の方法として手軽なのは積立投資です。
「積立」というと、銀行の積立預金のイメージが強いと思いますが、投資においても自動で定期的に決まった量の投資をすることができます。
定期的に定額で購入する方法のことを「ドル・コスト平均法」といいます。定期的に一定金額ずつ買い付けることで、値上がり・値下がりする株式や投資信託の購入単価を下げることが期待できます。
分散投資の注意点
このようにメリットの多い分散投資ですが、注意点もあります。
分散投資をする際には、とりあえず投資対象を別々にするのではなく、違う特性を持ち、違う値動きをするものを組み合わせることを心がけましょう。
日本株の中でさまざまな銘柄を買うよりは、日本株と米国株に分けたほうがリスクの軽減が期待できます。
景気の変動に対して異なる値動きをすることの多い株式と債券を買う、金融資産である株や投資信託と実物資産である不動産や金に分けて投資する、といったような分散も考えられます。
不動産や金というとハードルが高く感じられますが、不動産や金を対象としたREITや ETFを使うと、少額から手軽に投資することができます。
また、分散投資をすると、リスクも分散される代わりにリターンも分散されます。
たとえば保有している株が10倍になったとします。もし手持ちの資金をその株にすべて投資していれば大きなリターンを得ることができたとしても、分散投資をしているとそのリターンは小さくなります。
ただ、その株が半分に値下がりした場合、その株だけに投資をしていると資産も半分になりますが、分散投資をしていればマイナスを抑えることができます。
このように、分散投資とは、ローリスク・ローリターンの手法であることを理解しておくことが必要です。
景気はよくなったり悪くなったりしますし、投資商品も値が上がったり下がったりしますが、分散投資をしていればさまざまな状況に対応できます。
そして、分散投資は長く続けることによってメリットが大きくなります。目先の値動きにとらわれずに長く続けることが大切です。
まとめ
投資初心者にとって自分で「これだ!」という銘柄を選んで一点投資するのはハードルが高いのではないでしょうか。
まずは、無理のないところから、「投資商品」「地域」「時間」の分散を心がけて投資を始めてみてはいかがでしょうか。
記事作成:2022年4月20日