中国人旅行客回復でインバウンド消費は急拡大へ?
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、7~9月期の訪日外国人客数は657万8,000人で、コロナ前の2019年比で7.3%減となりました。4~6月期の同26.7%減から回復傾向が一気に強まる形となっています。中国が2019年比で57.1%減と減少幅が大きく、全体の足を引っ張っていますが、逆に言えば、中国の回復に伴う今後一段の拡大余地を残している状況であると考えられます。
一方、1人当たり旅行消費支出が大きく上昇しているため、7~9月期の訪日外国人旅行消費額は2019年比で20.0%の増加となっています。足元の円安進行に伴い、訪日客の日本における購買意欲が高まっているものと判断できます。現在、旅行者数上位の韓国や台湾と比較して、中国の1人当たり旅行支出は約2倍の水準にあることから、中国の訪日客数増加は消費額の一段の拡大にも直結するものと言えるでしょう。
2024年に向けては、中国からの訪日客数の本格回復により、インバウンド需要の再拡大時期が到来すると考えられます。とりわけ、円安に伴う物価高進行で国内個人消費の停滞が見込まれる中、国内の小売り部門におけるインバウンド関連銘柄の関心は高まりやすいと考えられます。
また、インバウンド関連の代表格でもある空運株などは、原油高などが業績の重しになるため、原油価格の上昇一服に伴って、ストレートにインバウンド拡大の業績寄与も期待できそうです。
インバウンド関連銘柄6選
コーセー(4922)
大手化粧品メーカー。「デコルテ」、「アルビオン」、「雪肌精」などが主要ブランドで、百貨店や化粧品専門店が販路の中心。化粧品業界の中にあって、国内での売上構成比が比較的高いなどインバウンド需要による業績インパクトが大きいとされる。ホテルアメニティーのブランドを新たに発表。
日本航空(9201)
大手航空会社。2023年3月現在、国内線133路線、国際線66路線を運航。国内旅客・国際旅客ともに売上構成比の3割超の水準。インバウンド受け入れの本格再開に備え、2017年から発売を開始しているJAL訪日ダイナミックパッケージの商品ラインアップを着実に拡充。
オリエンタルランド(4661)
「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」などのテーマパークを運営。2022年の2テーマパーク合計入園者数は約2,209万人。2023年上半期の海外ゲスト比率は13%程度。2024年6月、ディズニーシー8番目の新テーマポート「ファンタジースプリングス」オープン。
エイチ・アイ・エス(9603)
海外および国内旅行を取り扱う大手旅行会社。愛知県のテーマパーク「ラグーナテンボス」や訪日客に好評の「変なホテル」なども運営。長崎県の大型リゾート施設「ハウステンボス」は2022年に売却 。訪日インバウンド戦略などのコンサルティング事業も手掛けている。
高島屋(8233)
百貨店大手の一角。東京/日本橋・大阪・横浜などが主力店。2024年2月期の免税売上高は期中に上方修正して580億円の見通し。ジャパニーズカルチャーを積極的に取り入れたフロア構成の商業施設「京都髙島屋 S.C.」が2023年10月に開業した。
星野リゾート・リート投資法人(3287)
ホテルの開発・運営や再生事業を展開する星野リゾートがスポンサー。ホテル特化型のJ-REIT。2023年4月期末のポートフォリオは67物件、資産規模は1,911億円 。運営物件の中で「星のや京都」や「星のや富士」は、コロナ前の外国人旅行者比率50%強などインバウンドに強み。
記事作成日:2023年11月9日