利下げで注目セクターは?
8月23日、パウエルFRB(連邦準備理事会)議長は年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会合」の講演で、「金融政策を調整する時が来た(The time has come for policy to adjust)」と述べ、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利下げに踏み切る姿勢を明確にしました。
9月17~18日に開催されるFOMCでは0.25%の利下げが有力視されていますが、雇用状況の悪化を受け、市場では0.5%へと利下げ幅を拡大する、あるいは年内2回の利下げ予想が年内3回に増えるといった見方も出ています。
利下げによる金利低下局面では、ディフェンシブ(守り)銘柄として生活必需品など消費関連や医薬品関連の銘柄が人気化する傾向があります。また、金利低下のメリットを受ける銘柄として住宅関連、金利低下からの資産防衛として高配当銘柄などに注目が集まりそうです。
アマゾン・ドット・コム<AMZN>
アマゾン・ドット・コムは、ネットでの小売り販売のほか、電子書籍リーダーやタブレット端末などの電子デバイスの製造、販売も手がけている消費関連銘柄です。
2024年第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同月比11%増の1,480億ドル、営業利益は同91%増の147億ドル、純利益は同約2倍の135億ドルと増収増益となりました。1株当たり利益は前年同期の0.65ドルから1.26ドルへと大きく増加しています。
大幅増益の要因はAI(人工知能)の進歩が大きく貢献したことで、Amazon Web Services(AWS)の売上高が同19%増の263億ドルに伸びたことです。同社では、AWSのインフラとAIへの多額の投資を継続する方針です。
このAWSの好調に加え、利下げによる消費回復でEC(電子商取引)事業も上乗せされてくれば、株価の高値更新も視野に入ってきそうです。
年初から上昇が続いた株価は、7月8日上場来高値201.2ドルまで上昇しました。ただ、その後は調整となり、8月5日安値151.61ドルまで下落しました。そこからは消費回復の期待もあり9月13日高値188.5ドルまで上昇しました
ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>
ユナイテッドヘルス・グループは、医療保険のほか医療従事者・消費者向け医療サービス情報の提供などを手がけています。
2024年第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同期比6.4%増の989億ドル、営業利益は同2.2%減の79億ドル、純利益は同23%減の42億ドルとなりました。増収ながら減益となったのは、同社がサイバー攻撃により業務の中断など大きな影響を受け、8億ドルの医療準備金を設立するなどの対応を図ったためです。
医療関係の企業ということでNYダウ採用のディフェンシブ銘柄として注目度の高い銘柄です。
同社の株価は、500ドル前後でもみ合いを続けていましたが、7月中旬から上がりはじめ、9月4日高値607.94ドルまで上昇しました。その後も9月中旬時点で590ドル前後で推移しています。
ホームデポ<HD>
ホームデポは、住宅リフォームのための建設資材や家具、ガーデニング用品などを販売する小売りチェーン店を展開しています。
2024年第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同期比0.6%増の432億ドル、営業利益は同0.8%減の65億ドル、純利益は同2.1%減の46億ドルとなりました。1株当たり利益は前年同期の4.65ドルから4.60ドルに減少しています。また、年間の既存店売上高見通しを前年比1%減から3~4%減に下方修正しています。
金利低下による消費回復で、リフォームなどの需要が高まることが期待されそうです。
同社の株価は、3月21日高値396.87ドルから5月29日安値323.77ドルまで下落、その後は上下しつつも上昇傾向が続き、9月16日高値384ドルまで回復してきています。
エーティー・アンド・ティー<T>
エーティー・アンド・ティーは、高配当銘柄の1つで、電話サービスや無線通信やインターネット関連の事業も手がけています。
2024年第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同期比0.4%減の298億ドル、営業利益は同9.3%減の58億ドル、純利益は同28.7%減の39億ドルとなりました。1株当たり利益は前年同期の0.63ドルから0.57ドルに減少しています。モビリティの売上高は前年同期比0.8%増加したものの、通信事業の売上高が同0.9%減少しました。
1株当たり年間配当は1.11ドルで、予想配当利回りは5%を超えています。身近な高配当株として根強い人気がありそうです。
年初に16ドル台だった株価は、緩やかな上昇が続き、9月16日には年初来高値となる22.34ドルまで上昇しています。全体相が急落した8月上旬には、同社の株価も下げる場面がありましたが、その後はすぐに切り返し、上昇に転じています。
ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>
ベライゾン・コミュニケーションズは、高配当銘柄の1つで、子会社を通じて無線・有線の通信関連製品・サービスを提供しています。
2024年第2四半期(4-6月期)決算は、売上高が前年同期比0.6%増の328億ドル、営業利益が同8.3%増の78億ドル、純利益が同1.3%増の47億ドルとなりました。1株当たり利益は前年同期の1.10ドルから1.09ドルへとわずかながら減少しました。携帯電話の契約者数や無線ブロードバンドインターネットの顧客数が増加したものの、政府のインターネット補助金の終了でプリペイド式の加入者数が激減したことが、売り上げの伸びを抑えました。
なお、同社は11月1日の四半期配当金の増配を発表しており、18年連続での増配となりなす。予想配当利回りは6%を超えています。
同社の株価は、今年1月以降、おおむね40ドル前後で推移していましたが、直近は上昇傾向で、9月16日高値45.05ドルまで買われ、水準を切り上げそうな勢いです。
記事作成日:2024年9月17日