PBR1倍割れ銘柄が注目されるワケ
PBR(株価純資産倍率)への関心がここ1年間で急速に高まってきています。PBRとは株価が純資産の何倍まで買われているかを示す株価指標で、資産価値に対して割高か割安かを判定する際に使います。計算式は、「PBR=株価÷1株当たり純資産」で、低いほど割安となります。
PBRが1倍を割れている、ということはその会社の時価総額が純資産を下回っているということで、仮に会社を解散して株主で純資産を分けた方が価値が高い状態ということです。つまり、PBR1倍割れは会社の資産価値よりも割安なくらい、収益性や将来性が評価されていない銘柄ということです。
日本は欧米と比べてPBR1倍割れ銘柄が多い状態でしたが、2023年3月に東証(東京証券取引所)がPBRの低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請したことがきっかけとなり、その改善効果期待でPBR1倍割れ銘柄が一層注目されるようになりました。
PBRを改善する方法には、増配や自社株買いの実施などが挙げられ、東証の要請以降、大幅な増配などを発表して株価が急伸する銘柄も増えてきています。今後も増配などを実施する動きは増加し、それによる株価の上昇が期待できるものと見られます。
そこで今回は、今後のPBR改善が期待できる銘柄をご紹介します。
PBR改善が期待できる6銘柄
ENEOSホールディングス(5020)
PBR(連結)は0.64倍。石油元売り国内トップ。エネルギー、石油・天然ガス開発、金属の3つの事業が中核。JX金属の株式上場を準備中。25年度までの3カ年中期計画では、在庫影響除き当期利益の50%以上を「配当と自社株買い」で還元し、22円の配当を下限としている。EV(電気自動車)充電や水素など、中長期的な脱炭素分野での活躍余地は大きい。
日本製鉄(5401)
PBR(連結)は0.73倍。国内トップの高炉メーカー。韓国ポスコやアルセロール・ミタルと事業・技術提携。中国でも宝鋼集団と合弁会社を設立するなど世界規模での事業提携に積極的。米鉄鋼大手USスチールを約2兆円で買収すると発表、粗鋼生産量は世界第3位となる。大型買収で株主還元拡充期待後退も、積極的な業容拡大策に伴う収益率向上に期待。
パナソニックホールディングス(6752)
PBR(連結)は0.81倍。映像・音響機器、白物家電、住設機器など幅広い事業を手掛ける総合家電メーカー。電子部品やFA関連などのビジネスも展開。リチウムイオン電池工場を米テスラと共同運営、2030年度に生産能力を現在の4倍に拡大計画。PBR水準是正のための収益率向上に向け、今後も重点事業への集中投資や事業リストラ進展に期待。
高島屋(8233)
PBR(連結)は0.81倍。小売大手企業では数少ないPBR1倍割れ銘柄。国内百貨店大手で、大阪、日本橋、横浜など3つの基幹店に加え、京都、新宿、玉川、柏などでも展開。海外にも進出し、シンガポールの利益構成比が大きい。営業キャッシュフローの10%を配当に振り向ける新たな株主還元方針を発表。利益率向上に商業開発事業の積極化も期待。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
PBR(連結)は0.98倍。国内最大の金融グループで、三菱UFJ銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、アコム、三菱UFJニコスなどを擁する。米モルガン・スタンレーも持分法適用関連会社。2023年度までに配当性向40%への累進的な引き上げを目指している(前期配当性向35.3%)。日本銀行による金融緩和政策が修正されれば、最も恩恵を受けるセクター(業種)としても注目される。
商船三井(9104)
PBR(連結)は0.80倍。海運大手3社の一角。ドライバルク船やタンカー、LNG(液化天然ガス)船など様々な海上輸送サービスを提供。LNG船、自動車船の船隊規模は世界トップ級。日本郵船、川崎汽船と合弁でコンテナ船会社を展開、同合弁が2022年度までの業績急拡大をけん引。1月に入りコンテナ船市況は再度急伸し、足元の業績には上振れ期待も。
記事作成日:2024年3月4日