2強投信「S&P500」と「オルカン」
2024年1月から新しいNISA(少額投資非課税制度)もスタートし、ますます資産運用に注目が集まるようになりました。NISAの制度そのものは、株式や投資信託(投信)など投資で得られた利益にかかる税金が非課税となるものですが、重要なのは何といっても銘柄選びです。そこで今回は、個人投資家に圧倒的人気の2大投資信託を比較してみました。
ここ数年、投資系のメディアやSNSなどで論争となっているのが「S&P500とオルカンのどちらを選ぶべきか」というものです。
「S&P500」は、米国の主要企業500社の値動きを示す株価指数、一方の「オルカン」はオール・カントリー、つまり「全世界」のことを示しています。そして、それぞれに連動する投資信託として人気が高まっている代表が、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」です。
なお、ここからは、S&P500とオルカンは上記の投資信託を示すものとします。
両投資信託とも手数料が安く、NISA口座での取引(つみたて投資枠・成長投資枠)も可能ということもあって、投資初心者だけではなく、経験豊富な投資家からも人気を得ています。
両投資信託が設定された2018年からの値動きを比較すると、直近では比較的似たような値動きとなっていますが、設定来のパフォーマンスではS&P500に軍配が上がっています。
これは、「マグニフィセント・セブン」(アルファベット[旧グーグル]、アマゾン、メタ・プラットフォームズ[旧フェイスブック]、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)と呼ばれる巨大企業が急成長し、S&P500の上昇を大きくけん引したことによるものです。
では、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の主な構成銘柄を見ていきましょう。
オルカンも約60%が米国株!上位銘柄はほぼ同じ
これを見ると、両投資信託ともにほぼ同じ銘柄が並んでいます。しかも、全世界の株式に分散するはずのオルカンも、上位10銘柄はすべて米国の株式で構成されているのがわかります。
なお、オルカンの組み入れ上位10カ国は以下の通りで、全体の約60%が米国株への投資となっています。
では、投資家としては、「S&P500」と「オルカン」のどちらを選ぶべきなのでしょうか?
過去のパフォーマンスを比較する限りではS&P500となりそうですが、これはあくまでも過去の実績であって、将来を約束するものではありません。今後も世界経済の中で米国が伸びると考えるのであれば、S&P500を選択するべきでしょう。
一方で、「米国も魅力的だけど、成長著しいインドやそのほかの国々の成長にも期待したい」と考えるならオルカンを選んでみてはどうでしょうか。
為替市場の値動きもパフォーマンスに影響
なお、為替ヘッジのない海外に投資する投資信託の場合、外国為替市場の動きもパフォーマンスに影響することになります。ここ数年、それらの投資信託のパフォーマンスが大きく伸びた背景には、為替市場での円安ドル高の影響も含まれています。今後、為替市場が円高ドル安に進んだ場合には、パフォーマンスを蝕む要因にもなりかねません。
米国株への投資比率が高い投資信託の場合、ドル相場の影響も大きく受けることになります。米国以外への投資比率が比較的低い投資信託は、その分ドル相場の影響も小さくなります。ただ、オルカンでも約60%は米国株ですので、最も影響を受ける通貨がドルであることに変わりはありません。
今後も、米国企業が世界経済をけん引していくのか、それともそのほかの国の経済が飛躍的に伸びるのか、そして為替市場はどのように動くのか……。この辺りもどちらの投資信託を選ぶのかの材料になりそうです。
※詳細な商品性は目論見書をご覧ください
記事作成日:2024年1月30日