円安や物価高で夏の旅行は海外より国内?
経団連の発表によると、大手企業の定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率は5.58%になり、1991年以来33年ぶりの高水準となったようです。懐具合がよくなり、今年の夏休みは家族や友達と帰省したり、旅行に出掛けるという人が多くいるかもしれません。
しかし、2024年は1ドル160円まで円安が進行したことに加え、物価が上昇していますので、できるだけ低予算でと考えて国内旅行を検討している人もいることでしょう。
そこで今回は、株主優待が国内旅行や帰省の移動、レジャーやホテル等で利用できそうな旅行関連の3銘柄をご紹介します。
東日本旅客鉄道<9020>
企業紹介
首都圏や東日本地域を地盤とした国内最大の鉄道会社。駅ナカ物販事業や不動産賃貸が成長。「Suica(スイカ)」に注力。
注目ポイント
新型コロナウィルス感染症の流行が落ち着いてからは、鉄道利用がほぼ戻ってきていることに伴ってエキナカ店舗の売上増加に加え、ICカード事業関連の売上も増加し、2024年3月期の純利益が約2倍になるなど業績は好調です。東京都を中心に再開発を進めていて、商業施設やオフィス利用等の拡大を見込んだ収益の向上が期待されます。
株主還元策として、配当金と株主優待を実施しています。今期の配当金は52円を予定しています。前期の配当金は140円でしたが、4月1日付けで1:3の株式分割をしたので、実質増配となります。予想配当利回りは2.01%です(24/06/19現在)。
株主優待は、3月末を基準に分割後の株数で300株以上を保有している株主に、保有株数に応じた株主優待割引券と株主サービス券を発行しています。株主優待割引券はJR東日本営業路線の新幹線の割引券です。2年以上継続して長期保有している株主には1枚追加となります。また、株主サービス券は、レストラン割引券や駅レンタカー割引券、スキー場リフト券引換券といった様々なサービスを受けられます。
株価動向
株価は2024年3月の権利確定に向けて2023年10月頃から上昇し始め、2024年2月には3,108.3円まで上がりました。その後は3,000円前後で推移する状況が続いていましたが、2025年3月期の決算は4期連続増収予定も材料出尽くしになったのか利益確定に押されてしまったようで、6月に入ってからは2,500円台まで値下がりしています。昨年10月頃の水準まで下がっていますので、押し目を拾うチャンスかもしれません。
西武ホールディングス<9024>
企業紹介
東京北西部や埼玉地盤の西武鉄道と、「プリンスホテル」が中心事業。
注目ポイント
インバウンド需要の増加や値上げの効果もあり、国内外のホテル事業やレジャー事業は好調な業績が続いています。さらに、東京都心だけでなく、軽井沢等のリゾートエリアの不動産事業も好調で、2024年3月期の経常利益は約2倍となりましたが、純利益は前期の固定資産売却益の反動もあり減益でした。
今期の配当金は30円を予定しており、増配となります。さらに今回からDOE(株主資本に対する年間配当金の割合)2.0%を下限に累進配当を導入しましたので、今後は減配がなくなり増配または維持する方針となります。予想配当利回りは1.34%です(24/06/19現在)。
株主優待は、3月末と9月末を基準に保有株数に応じた株主優待乗車券と施設利用優待券を発行しています。株主優待乗車券は西武線、西武バスの乗車券で、3,000株以上を3年以上継続して長期保有している株主には追加の発行もあります。また、施設利用優待券は、各地のプリンスホテルの割引券や、レストラン、ゴルフ場、スキー場等の割引券、埼玉西武ライオンズ主催の公式戦内野席引換券といった様々なサービスを受けられます。
株価動向
株価は2024年3月の権利確定に向けて2023年10月頃から上昇し始めました。2024年3月期決算への期待も高まっていたようで、2024年4月には2,605.5円まで上昇しました。ただ、2025年3月期の決算は減益見通しということから材料出尽くしとなり、利益確定売りに押される動きが続いています。株価は一時2,000円を下回る下落になりましたが、その後は2,000円台前半まで反発しています。
ANAホールディングス<9202>
企業紹介
国内線、国際線ともに首位。傘下にLCCの「Peach(ピーチ)」がある。
注目ポイント
インバウンドや旅行・レジャー需要を取り込み航空機利用者が増加したことで、国際・国内ともに旅客事業が好調でした。LCCのPeachも過去最高の売上高と営業利益となり、2024年3月期は純利益が前期比75.6%増となりました。今期も航空事業は順調ですが、補助金の減少や整備費の増加などで減益予想となっています。
配当金はコロナ禍で無配となっていましたが、今期から復配し50円の配当を予定しています。予想配当利回りは1.72%です(24/06/19現在)。また、今後は株主還元を強化していく方針です。
株主優待は、3月末と9月末を基準に100株以上を保有している株主に、保有株数に応じたANA国内線ご搭乗優待とANAグループ各社・提携ホテル優待を発行しています。ANA国内線ご搭乗優待は国内全路線(コードシェア含む)の片道1区間が株主割引運賃で利用できます。また、ANAグループ各社・提携ホテル優待では、ホテルや空港内売店、国内外のツアー商品等の割引が受けられます。
株価動向
株価は2024年3月の権利確定に向けて2023年10月頃から上昇し始め、2024年2月には3,385円まで上昇しました。2024年3月期の決算は好業績でしたが、今期の決算は減益見通しということもあって株価は3,000円を下回り、昨年10月の安値水準まで近づいています。
記事作成日:2024年6月19日
ファイナンシャルプランナー
横山利香
短大卒業後、金融専門出版社やビジネス書出版社で雑誌の記者、書籍の編集者を経て、ファイナンシャルプランナー、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)として独立。株式や不動産、外貨、投資信託など、資産運用をテーマとした執筆や講演活動、投資塾などを行う。株式や不動産への投資を中心に、為替などさまざまな金融商品への投資を行う。大学生の子どもがいる。