資産運用では「分散」が大切です。一つの投資対象に資金を集中させると、それが不調だったときにダメージが大きくなりますが、特徴が違う複数のものに分散しておけば、お互いがカバーし合って、大きな損失のリスクを抑えられます。「株式と債券」「輸出株と内需株」といった対象商品を分ける方法以外にも、「国内株と米国株」など対象地域を分ける方法や、投資時期をずらす方法があります。
実際に投資するとき、こうした分散投資を見える化したものが、保有している金融資産の組み合わせ=「ポートフォリオ」です。ポートフォリオ(Portfolio)とは、もともと書類を挟む紙ばさみや書類ケースを指す単語で、かつては実際に数種類の有価証券をはさんで使用していたことから、こう呼ばれています。
今回は、保有している金融資産の組み合わせが一目でわかる「ポートフォリオ」について説明します。
ポートフォリオとは金融資産の組み合わせ
株式、債券、不動産、商品(コモディティ)、為替など、さまざまな投資商品がある中で、具体的にどの分野の、どの商品に、どのような配分で、投資するかを表すのが、ポートフォリオです。それぞれの比率は、投資する資産の規模や運用期間、期待する利回り、リスク許容度など、さまざまな要素によって違ってきます。
一般的に、債券より株式、また同じ株式でも規模の大きな大型株よりベンチャー企業のほうがハイリスク・ハイリターンとされています。ある程度リスクを取ってでも高いリターンを期待する場合は、ハイリスクを理解したうえで株式やベンチャー企業の比率を高める必要があります。逆に、あまりリスクを取らずに手堅くいきたい場合は、債券や値動きの緩やかな大型株の比率を高めるといいでしょう。
年金資金の基本ポートフォリオは4等分
では、実際にどういった組み合わせがあるのでしょうか? たとえば、私たちの年金原資として219兆円以上の資金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」では2020年以降、「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」がすべて25%ずつという基本ポートフォリオを組んでいます。時期によって数%の増減はあるものの、基本的にはこの割合がキープされています。
実はこのポートフォリオも時代によって変遷しており、2006~2009年度には「国内債券」67%、「国内株式」11%、「外国債券」8%、「外国株式」9%、「短期資産」5%でした。
その後、債券の比率を抑えて株式の比率を増やす方向で段階的に変更されていきました。その結果、運用環境好転などによって収益性が上がり、2001年度から2023年度第1四半期までの累積収益額は127兆3,658億円、収益率は年率3.97%となっています。
自分なりのポートフォリオを組むことが重要
ポートフォリオを組むことで分散投資を活用した資産運用を行うことができます。初心者も投資を始める際にポートフォリオを組むことを意識するといいでしょう。ただ、ポートフォリオの割合をどうするかは人それぞれです。どのくらいの利回りを期待するか、どの程度リスクを許容できるかは、人によって違うからです。
たとえば、教育資金や住宅資金など、使う時期が決まっている資金の場合は、それほどリスクを取れないはずです。各世帯の資産状況や今後のライフプランなどに合わせてリスク許容度を見極め、自分なりのポートフォリオを組むことが重要です。
なお、ポートフォリオは一度組んだらずっとそのままでOKというわけではありません。金融商品は日々価格が変動するので、資産配分も当初の割合からズレてしまうことがあります。そのため、比率が減ったものを買い増し、増えたものを売却することで、当初の割合に戻す「リバランス」も検討しましょう。半年や1年ごと、あるいは相場が大きく動いたときに、ポートフォリオを見直すといいでしょう。
ちなみに、投資信託は多くの投資家の資金をまとめて、内外の債券や株式など、さまざまな投資対象に分散投資して運用する金融商品で、それ自体がポートフォリオともいえる性質を持っています。一から自分でポートフォリオを組むのが面倒な場合は、投資対象を確かめたうえで、投資信託を利用するのも有効な方法です。
記事作成日:2023年9月14日