💡この記事のポイント
✅アクティビストは投資先の企業価値向上を目指すファンド
✅大量保有の判明で株価が上昇することも
✅アクティビストが保有する日本株を紹介
🔎登場する主な銘柄
✅食品:東洋水産
✅化学:東ソー、小林製薬
✅自動車:豊田自動織機
✅海運:川崎汽船
✅ガス:東京瓦斯(東京ガス)
アクティビストの日本株保有残高は約9.3兆円
昨今の日本株市場では、アクティビスト(物言う株主)の影響力が高まっています。アクティビストとは、株主としての権利を積極的に行使して、投資先企業に経営方針や事業展開などの提言を行い、企業価値の向上を目指す投資家(主にファンド)のことを指します。
国内で有名なアクティビストとしては、エフィッシモ・キャピタル、シティインデックスイレブンス、ストラテジックキャピタルなどが挙げられます。
海外のファンドでは、エリオット・マネジメント、オアシス・マネジメント、バリューアクト・キャピタル、ダルトン・インベストメンツ、サードポイントなどが著名です。
アクティビストの動きは活発化しており、日本株の保有残高は現在約9.3兆円にまで積み上がり、時価総額全体に占める比率は1%に迫っているとの報道もありました。今後もアクティビストの存在感は一段と強まってくる可能性が高いでしょう。
増配や自社株買いなどを迫り株価上昇
著名なアクティビストの大量保有が伝わると、今後の株主価値向上策に期待して株価が上昇するケースが多く見られます。また、アクティビストの提案が企業側に受け入れられ、のちに大幅な増配や自社株買いを実施、あるいはMBO(経営陣による自社買収)に踏み切るような動きも増えてきており、さらなる株価上昇につながっていく状況も多くなっています。
最近では、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントがメルカリ<4385>を5.37%保有していることが判明したことで、11月13日終値から11月22日高値まで18%上昇しました。小林製薬<4967>も11月にオアシス・マネジメントが買い増したことで上昇しました。
そこで今回は、アクティビストの大量保有が判明している日本株を取り上げます。
東洋水産<2875>
「赤いきつね」「緑のたぬき」「マルちゃん正麺」などを有する即席めんが主力の食品メーカーです。株主総会で投資会社の日本グローバル・グロースが提出した増配や資本コスト開示を求める提案に米国の投資ファンドであるダルトンも賛成を表明しました。
これまで資本効率への意識が低いとされていましたが、こうした動きをきっかけに6月には17年ぶりの自社株買いを発表、2025年3月を目安に資本コストや株価を意識した経営に向けて新たな方針を示すともしています。
株価は11月以降、右肩上がりの推移が続いています。11月25日には高値11,085円をつけ、5月22日上場来高値11,800円が視野に入ってきました。新たな経営方針が示されれば、さらなる上昇も見込めるかもしれません。
東ソー<4042>
塩ビ樹脂や苛性ソーダで強みを持つ総合化学メーカー大手の一角です。6月5日に英投資ファンドであるシルチェスターが5.06%の大株主になったことが明らかになりました。その後も買い増しを続け、10月31日には7.27%まで保有比率が上昇しています。
その後2025年3月期今期業績予想を下方修正しましたが、年間配当金は増配しています。今後は上場子会社となっているオルガノの資本関係見直しなどが注目ポイントとなりそうです。
アクティビストによる買い増しもあって、株価は比較的底堅く推移しています。8月5日年初来安値1,650円から11月25日高値2,136.5円まで上昇し、高値もみ合いとなっています。
小林製薬<4967>
医薬品、医薬部外品、家庭用品の製造販売メーカーで、ニッチ分野における製品開発に定評があります。今年3月に紅麹サプリメントによる健康被害が発覚し社会問題化しました。
その後7月24日、香港のオアシス・マネジメントが5.2%の大株主として登場しました。11月時点では7.54%の保有比率となっています。12月に入り、オアシスでは臨時株主総会の開催を要求しています。業務や資産の調査人や取締役3人の選任を求めており、今後の経営改革の進展が期待されます。
4月以降、株価はおよそ5,000円~6,000円程度で推移しています。2020年12月上場来高値13,120円以降、長く株価低迷が続いてきただけに、経営改革による株価の反転に期待したいところです。
豊田自動織機<6201>
カーエアコン用コンプレッサー、フォークリフトで世界トップシェアを占めています。2024年3月末現在、トヨタ自動車の株式を7.31%保有しています。
5月には英投資ファンドのアセットバリューや米ダルトンなどから株主提案を受けました。会社側では、2027年3月期までの3年間で約7,000億円の株主還元を実施するとし、政策保有株の売却も加速させるとしています。トヨタ自動車などの政策保有株売却に伴う株主還元余地は今後も大きいと考えられます。
株価は3月22日上場来高値16,265円以降は下落基調です。8月5日年初来安値8,908円へ下落以降は、10,000~12,000円で推移してします。アクティビストからの提案を受けて、積極的な株主還元を表明しており、今後の動向が注目されます。
川崎汽船<9107>
大手海運の一角で、日本郵船<9101>、商船三井<9104>と共同出資するコンテナ船会社が足元の収益の稼ぎ頭です。長期にわたりアクティビストと真摯に向き合ってきた企業と言えます。
2015年に投資ファンドのエフィッシモが6%強の株式を取得、その後の買い増しで保有比率は一時39%まで高まりました。対話を重ねた結果、その後の業績は大きく拡大しました。今後、エフィッシモは保有株売却方向とみられ、自社株買い拡大や経営自由度向上などが想定されます。
株価は8月5日年初来安値1,656円をつけて以降、およそ1,800~2,300円程度で推移しています。11月には増配や自社株買いを発表しています。
東京瓦斯(東京ガス)<9531>
国内首位の都市ガス会社で電力小売なども手がけています。11月19日には世界最大のアクティビストの米エリオットが5%強保有していることが明らかになっています。
2025年3月期見通しでROE(自己資本利益率)は5%程度にとどまるほか、相対的に配当も見劣りすると見られてきました。会社側では11月28日に、配当を増額または維持する累進配当の方針を明確にし、増配を検討するともしていますが、今後は1兆円以上とも見込まれている保有不動産の売却が進むことなども期待されてきそうです。
株価はアクティビストの保有が明らかになった翌日の11月20日に大きく上昇しはじめ、11月29日年初来高値4,637円まで上昇。その後も高値圏で推移しています。今後は、増配や保有不動産の売却などの動向が注目されそうです。
記事作成日:2024年12月18日