💡この記事のポイント
✅AIエージェント/AI半導体市場は拡大が続く
✅カスタム半導体の需要が急拡大
✅ブロードコム、ソシオネクストなど日米6銘柄を紹介
ブロードコムやマーベル・テクノロジーが躍進
米国半導体大手のエヌビディア<NVDA>の株価は2023年の年始から年末にかけて約3.3倍となり、2024年にも約2.7倍と続伸し、時価総額で世界トップを争う存在となりました。同社は、大量の計算を行うことができるGPU(画像処理半導体)で圧倒的なシェアを誇りますが、AI(人工知能)の台頭によって需要が急拡大し、業績が様変わりしていることが株価上昇の背景にあります。
一方、エヌビディアの大幅な上昇によって、今後の業績成長期待は株価に強く織り込まれる状況にもなっており、足元の株式市場では「次のエヌビディア」を探る動きが強まりつつあります。
例えば、カスタム半導体を手掛けるブロードコム<AVGO>の株価は2024年に約2.1倍となり、同業のマーベル・テクノロジー<MRVL>の株価も同じく約1.9倍の上昇となるなど、半導体関連ではこの2銘柄がエヌビディアに次ぐ上昇率となっています。
最近はAI市場の拡大で特定用途向けの高度なカスタム半導体の需要が急拡大しています。この分野では、ブロードコムが世界シェアトップで、マーベル・テクノロジーとソシオネクストがトップ3を占めています。
これはアップル<AAPL>、アルファベット<GOOGL>、メタ・プラットフォームズ<META>などの大企業が「エヌビディア依存」から脱却するため、ブロードコムなどと提携しカスタム半導体を利用する動きが広がっていることが背景です。
AIエージェントなどAI周辺銘柄も注目
また、AIは半導体やデータセンターなどのAIインフラから、実際にAIを利用したサービスや事業に注目が拡大してきています。
その筆頭が「AIエージェント」です。AIが自律的に考え作業してくれる、まさに人の代わりに働いてくれるAIです。今年はこの「AIエージェント」の普及や利用拡大が進むと見られ、その関連銘柄が注目を集めそうです。
自らの判断で作業する自立型のAIエージェントで、営業やマーケティングを支援する「エージェントフォース」が好調なセールスフォース<CRM>や、同様のAIエージェント「Google Agentspace」を提供するアルファベットなど関連銘柄が増えています。
その他にも、政府の防衛・諜報機関をはじめ、様々な業種にAIを活用した情報分析ソフトを提供しているパランティア・テクノロジーズ<PLTR>、企業の販促分野などでの経営課題解決を支援するためにAIを活用したプラットフォームを提供しているAppier Group<4180>などの「AI周辺銘柄」も注目されています。
今回はますますの市場拡大が期待されるAI関連の日米株を紹介します。
エヌビディア<NVDA>
GPUで世界シェア約8割と推定される米国の半導体メーカーです。半導体設計のみを行ない、製造は自社で行なわないファブレス企業です。AI向けに需要が急拡大し業績は急成長、時価総額はアップル<AAPL>と世界トップを争っています。
半導体は地政学的な戦略物資としての価値も高まり、機関投資家のポートフォリオに同社の存在は不可欠と言えます。昨今では、トヨタ自動車<7203>の次世代車両向けに最新半導体を供給すると発表しました。
株価は、2023年から約10倍高のテンバガー銘柄となっています。特に、2024年は大幅に上昇し、半導体関連の中心的な銘柄として注目されました。今年1月7日には一時153.13ドルまで上昇し上場来高値を更新しました。
ブロードコム<AVGO>
データセンター、通信キャリア、スマホ、自動車などへの供給を主力とする半導体メーカーです。主要顧客3社(アルファベット傘下のグーグル、メタ・プラットフォームズ、中国バイトダンス)に対するAI向け半導体は、2024年10月期の150~200億ドルから、2027年10月期には600〜900億ドルに膨らむとの見通しを示し、AI向け半導体の担い手として存在感が強まっています。また、アップルとのAI向けカスタム半導体での提携で、売上増が期待されています。
株価は2024年1月安値104.15ドルから12月上場来高値251.88ドルまで大きく上昇しました。特に昨年12月にはAI半導体の需要急増見通しが好感され、投資家の注目を集めて飛躍しました。その後は230ドル前後で高値もみ合いが続いています。配当利回りが1%程度あるのも魅力です。
マーベル・テクノロジー<MRVL>
データセンター向けなどの半導体を設計・開発・販売するファブレス企業です。高速データ通信用チップを手掛ける「インファイ」、データセンター向けイーサネットスイッチを手掛ける「イノビウム」などを相次いで買収、M&Aで業容を拡大しています。AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)との戦略的提携を新たに5年契約に拡大し、データセンター向け半導体でAWSのコスト削減を支援すると発表しています。また、エヌビディアに代わるAIカスタム半導体提供に向けて、グーグルやマイクロソフト<MSFT>との提携も進んでいるようです。
株価は2024年10月頃から人気化し、12月には一時126.15ドルまで上昇して上場来高値を更新しました。他の人気銘柄に比べると人気化してから日が浅く、AIカスタム半導体の好調で注目度が高まっていることから、高値もみ合いからの脱却が期待されています。
セールスフォース<CRM>
クラウド型の法人向けCRM(顧客管理)ソリューション事業を展開しています。
指示を出さなくても自らの判断で作業をする自立型のAIエージェントである「エージェントフォース」に注力しており、業績を押し上げています。同社は、このサービスの普及について強気な見方をしており、2025年には10億以上のエージェントが稼働すると予測しています。
AIエージェントの代表的な銘柄として折に触れて注目されそうで、今後の業績動向が気になるところです。
株価は2024年5月安値212ドルから12月上場来高値369ドルまで上昇しました。足元はやや調整しており、330ドル前後まで下落しています。
ルネサスエレクトロニクス<6723>
自動車向けマイコンを得意とする日本の半導体大手メーカーです。三菱電機<6503>と日立製作所<6501>からの分社化企業とNECエレクトロニクスが経営統合して2010年に設立されました。2024年8月には米ソフトウェア会社を約8,879億円で買収しました。
今後、自動運転、EV(電気自動車)市場拡大でビジネスチャンスが広がる期待があります。また、演算用半導体とメモリー通信を補助する半導体を開発、データセンター向けを視野に2025年前半に量産予定です。
株価は2024年7月高値3,397円から8月安値1,821円へ下落しました。9月以降はおよそ1,900~2,300円程度で推移しています。配当利回りが1.4%程度あり、株価を下支えしているような値動きです。
ソシオネクスト<6526>
「ソリューションSoC」という新しい独自のビジネスモデルのもとでカスタムSoC(システム・オン・チップ)を開発・提供している半導体のファブレスメーカーです。自動車やデータセンター向けを主力としています。
注文を受けてから半導体を開発・生産するカスタム半導体メーカーで、汎用性のある高性能半導体を手掛けるエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>とは異なるビジネスモデルです。カスタム半導体のシェアは、世界のトップ3に入ります。自動運転分野では、トランプ次期米大統領が規制緩和を検討しており、市場拡大で飛躍に繋がる可能性が高そうです。
株価は2024年4月高値5,250円から11月安値2,284円へ下落しました。その後は徐々に持ち直してきており、直近は2,700円前後で推移しています。世界的に注目を集めるカスタム半導体関連の日本株として注目されているだけに再浮上が期待されています。配当利回りが2%近くあり、底堅い動きとなっています。
記事作成日:2025年1月15日